私は、幼児期の子どもたちには、美術を「教える」必要はないと考えています。私が美術を教える中で大切にしていることについて、少しお話ししたいと思います。
幼児期に必要なのは、教えることではない
私は幼児期の子どもたちには、基本的に知識や技術の指導は必要ないと思っています。彼らは、素材に自由に触れ、自分のインスピレーションで制作を進めることができるからです。

美術で一番大切なことは、自分の感受性で作る力だと考えています。だから、さまざまな素材や道具を用意して、可能性をちょっと見せることで、彼らの感受性を刺激して創造性を高めることを心がけています。
そして、思うようにできないときや、わからないときにサポートをする。作ってあげたり、一緒に作ったり、教えたり、成長の段階に合わせて創造のお手伝いをしてあげることが、私の役割だと思っています。
創造する心は、本来誰もが持っている
多くの人が、「知識や技術がなければ作れない」と思い込んでいます。それは幼い頃に持っていた「創造する心」や「自由な発想」を、大人になる過程で忘れてしまったからです。
幼児期の子どもたちは、教えられずとも、自分の感覚で、感じたままに作り始めます。小学生でも、評価をしたり無理に教え込もうとしなければ、自分の価値観で自由に作り始めます。
失敗してもいい、間違ってもいい、安心して制作できる環境があれば、創造を楽しむことができます。
体験を楽しむことに意味がある

幼い子どもたちが作るものは、大人の価値観で見ると、何をしているのかわからないことが多いと思います。
大人は作品を完成させるために作りますが、彼らにとっては、作ることそのものに意味があります。さまざまな素材に触れ、道具を使い、描いたり作ったりして、目の前に現れる現象を楽しんでいるのです。
「作品を完成させる」ことよりも、「創造を体験する」ことを楽しんでいる。
作品の完成度や、他者の評価を気にするようになる前の、この純粋な創造の喜びが大切だと考えています。それは、生きることを楽しむ力であり、自分の人生を創造的に生きるための土台になるものだと思っています。
大人の目には無駄に見えることも多いかもしれませんが、無駄に見えるものの中にこそ、本当の創造性が隠れているのです。
技術や知識は、必要になったときに少しずつ
もちろん、技術や知識を学ぶことは表現の幅を広げるために大切です。
でも、それは「こう作りたい」「ああいうふうに作りたい」という思いが芽生えたときに、必要なだけ、少しずつ学んでいけばいいのです。
知識や技術は便利なものですが、頼りきりになってしまうと、自由な発想を失うリスクもあります。知らないからこそ閃くことがあり、知ることで、常識の枠に囚われることもある。
頭で覚えることに偏ると、自由な心の働きを損なうことがあります。成長の段階に合わせて、必要なときに、そっと伝えていけばいいと考えています。
成長のスピードも、表現の形もそれぞれ


成長の段階や速さは、本当に一人ひとり違います。女の子は比較的早い段階で具体的な形を作ることが多いし、男の子は、何をしているのかわからないものを作り続けることもある。個人差があるから逆の場合もあります。
美術に限らず、成長が早い方が、高度なことができるようになるとは限りません。
子どもたちの創造に学ぶ

万象舎は、先生が知識や技術を教えて、子どもたちはそれを受け取る場所ではありません。子どもたちが自ら創造し、育つ場所です。
子どもたちは、生まれながらにしてアーティストだと思っています。私は、彼らの創造性を心から尊敬しています。その可能性を広げるために、ときに見守り、ときに一緒に作り、必要なときに方法を教える。ぼく自身は、彼らのアシスタントでありたいと考えています。
もし、子どもたちの自由な表現を大切に育てる場をお探しでしたら、どうぞ一度お声かけください。