万象舎のサブタイトル「ars atrium」には、この教室が大切にしている理念が込められています。
「ars(アルス)」――技術と創造の力を表す言葉
「ars(アルス)」はラテン語で「技術」や「手仕事」を意味し、今の「アート(art)」の語源にもなった言葉です。ただし、「ars」の意味は現代の「アート」よりも広く、古代ローマでは医術、建築、工芸、弁論術など、自然を観察して新しいものを作り上げる人間の知恵や技術全般を指していました。
「ars」はギリシャ語の「τέχνη(テクネー)」に相当する言葉で、「自然の法則を理解し、それを活かして何かを創り出す力」という本質を持っています。この言葉には、ただ美しいものを作るだけではなく、「工夫し、考え、手を動かして技術を磨く」という意味が込められているのです。
「atrium(アトリウム)」――学びと交流の場を象徴する空間
「atrium(アトリウム)」もラテン語が由来で、古代ローマ時代の家の中心にあった広い空間を指します。この空間は自然光や風を取り入れる場所で、人々が集まり、話し合い、学び合う場でもありました。そのため、「atrium」は単なる建築的な構造以上に、「開かれた空間」や「人と人がつながる場所」を象徴しています。
現代の建築では、大きな窓やガラス屋根を使った明るい内部空間を「アトリウム」と呼ぶことがあります。こうした空間は、建物の中でも自然と調和し、利用者にとって心地よい場所として設計されています。
「ars atrium」が表す万象舎の理念
「ars atrium」という言葉は、万象舎が目指す教室の姿を表しています。「ars」は、人間が自然を観察し、考え、手を動かして技術を磨き、何かを生み出す力を。「atrium」は、そうした学びが自由で開かれた空間の中で行われることを意味しています。
私が「ars」という言葉を選んだ理由は、美術だけでなく、整体や料理といった分野にも取り組んでいるからです。整体では、人の体を観察し、そのしくみを理解して整える技術が必要です。料理では、食材の特性を見極め、それを活かす工夫が求められます。このように、私が行っていることはどれも「ars」の実践そのものです。そして、万象舎の教室は「atrium」のように、受講生が学び合い、成長できる場を目指しています。
自然を観察し、技術を磨く力を育てる
「ars atrium」という言葉には、自然を観察し、自分の手を動かして技術を磨き、それを使って新しいものを生み出す大切さを伝えたいという思いが込められています。この教室では、美術の技術だけでなく、日常生活や他の分野でも役立つ学びを提供しています。学ぶことで自分の力を育て、表現を広げていける。そんな場を作ることが、万象舎が目指していることです。