

読売カルチャー横浜で、3年生から6年生まで教えたMさんの作品です。
左のレモンが小3のとき、右が6年生の時に描いたもの。
美術を20年近く教えてきましたが、小学生を相手に継続して、観察して描く指導をするのはこれが初めてでした。
私が大人用に開発したデッサンの指導法が、子供にも通用するかどうか、初めての実践の記録でもあります。
いつも子供達の相手でいっぱいいっぱいで、よく写真を撮り忘れてしまいます。
全ての作品があるわけではありませんが、成長の軌跡です。
3年生

観察の方法を具体的に教えはじめた、1枚目か2枚目位の作品です。
これを見てMさんのポテンシャルの高さを感じました。
まだ拙いけれど、頑張って観察して丁寧に描いた緊張感のある線がいい。
画面の収まりがいいし、色がいい。
彼女のセンスの良さを感じる特に好きな一枚。額装して欲しい。

多分、初めての鉛筆デッサンだったと思う。はじめに輪郭で描いて、丁寧に明暗を描いていく。

バナナを絵の具で描いた。筆の運びは荒いけど力強くていい。
光の当たり方の違いによる色の変化をよく捉えている。
やっぱり色彩に対しての感覚が優れているんだなと思った。

鉛筆デッサン。描いた時期がはっきりしないけど、おそらく3年生の頃に描いたものだと思う。わからないなりに手探りで根気よく描いている。上達してから、この粘り強さがなくなってしまったのが惜しい。

花を描いた。この時、1年生でめちゃくちゃ上手い子が来ていて、ちょっと意識していたと思う。
4年生

色遊び。この日は観察して描く気分ではなかったので絵の具で色を楽しんだ。

とうもろこし。はじめ鉛筆で描いていた。いい感じの線で描いていたけれど、絵の具を塗ったら線が消えてしまったのでちょっと勿体無かったけれど、これはこれで緑のバリエーションが豊かで面白い。

ここまでの指導は、基本的に観察を促すことだけにしていた。あまり色々と教えると、本人の感性を発揮する妨げになる可能性がある。
でも、少し伸び悩んでいる感じがしたので、技術を教えようと思った。
言葉で説明するのではなく、描いてみせた。
自分でキャッチできる範囲で取り入れて貰えばいいと思った。
そうしたら、色鉛筆の使い方を上手く吸収して描いたので驚いた。
ここで画材を扱う力が力がグッと向上したと思う。

前回覚えた技術を活かして描いたりんご。色鉛筆の使い方を自分なりに、ものにできたようだ。

桃。りんごが良く描けたのでちょっと見劣りはするけれど、微妙な色の違いを丁寧に観察して描いている。

構図を意識して描いてもらった。仕上げのタイミングは、基本的に本人に決めてもらっている。もうちょっと描こうよ、と声をかけることもあるが、強制はしない。4年生になって、グッと上達はしたのだけれど、序盤で上手くいかないと途中でやめてしまうことが多くなった。
5年生

パネルに貼った画用紙に透明水彩絵の具で描いた。
2週続けて描いたのはこれが最初で最後の一枚になった。
本人の希望で用意したバナナ。終始集中して描くことができた。
これを見て、新たえて明暗ではなく色でものを見ていると感じた。
6年生

百合の花。バナナで表現した明暗の繊細なグラデーションが、鉛筆だと上手く表現できない。やはり「明暗」と「色彩」整理ができていないからだと思う。色彩感覚が優れているところは長所であり、短所でもある。光の方向や流れがうまく観察できていない。

この日は集中力がなかった。

栗。本人リクエスト。集中して丁寧に描けた。

別課題のイラストで、構図を工夫するように指導をしているから、構図を工夫して描いた。ただなんとなく全体を入れて描くことが多いけど、これは大胆にクローズアップしている。

これも途中で飽きてしまった勿体無い一枚。上手くいかなくて投げてしまうことはよくあるし、それは仕方がないとは思うのだけれど、これはまさにこれからよくなりそうなところだったのでもったいないと思った。

薔薇。良くなりそうなところだったのだけど、途中で投げてしまった。

久しぶりに集中して描けた。6年生になって、過程を見られるのを嫌がるようになった。途中で指導するのが重要なのだと言ったのだけど、あっち行けという(笑)
途中で口を出されたくない、まあ成長の過程として見守ることにした。
今回も本人リクエストのりんご。前に描いて上手く描けたからもう一度、ということか。前回のりんごが2年前。比べてみるとかなり成長したのがわかる。

鉛筆デッサンは基本的に苦手だが、これは綺麗に描けた。モチーフが白いから色に惑わされなかったからだと思う。明暗だけを見て描くことができた。

コピックのコンクールを目指しているのでコピックを使って描いた。モチーフを観察しながらコピックで描いた初めての一枚。こんなに描けると思わなかったと言ったら、本人も描けると思わなかったと言っていた。モチーフとの相性が良かった、というのもあるが、やはり、観察して色で表現すると力を発揮する。色の再現性が高い。かなり先生な色の違いをキャッチできるし表現できる。イメージしたイラストを描く時はここまで描けないので、イラストを描く時にも、持っている力を発揮できるようにすることが今後の課題。

中学生になるので教室は辞めることになり、最後の一枚。残念ながら途中で投げてしまった。でも、まだ小学生だから苦手の克服をする必要はないと思い、得意な色彩で描く力を伸ばす方向で指導をしたけれど、時々自分で鉛筆を選んでチャレンジする。最後だけど、鉛筆でチャレンジする心意気が良かったと思う。


卒業おめでとうございます。本当に、いいもん見させてもらいました。感謝!!