初心者向けデッサン指導法:シングルタスクアプローチで段階的にスキルを磨く方法

目次

はじめに

デッサンを始める際に、多くの初心者が直面するのが「観察ではなく、塗り絵のような作業になってしまう」という問題です。デッサンで一番大切なことは、観察することです。しかし一般的なデッサンは、①長時間集中し、②細密に、③正確に、③様々な要素を観察し、④表現することが求められますが、これが初心者にとっては難しく、多くの人が挫折をしてしまいます。

そこで、私が提案するのが「段階的に学ぶシングルタスクアプローチ」のデッサン練習法です。この方法は、少しずつステップを踏んで特定のテーマに絞り込むことで、無理なく観察力を向上させることを目指しています。

独自の段階的デッサン指導法とは?

シングルタスクアプローチの基本

シングルタスクアプローチとは、一度に一つのことに集中して観察する学習方法です。一般的なデッサンにおいては、バランス、明暗、形、質感など、さまざまな視点で観察して表現します。これらを一度に行うのではなく、段階的に分けて練習するのです。例えば、まずはバランスの観察に集中したデッサンを行い、次に明暗の観察に集中したデッサンを行う、といった具合です。

段階的な学習ステップ

私の指導法では、以下のようなステップでデッサンを学んでいきます

1. バランスの観察

• バランスを確かめる観察の方法を学び、精度の高い線を描く練習から始めます。バランスよく描く力がついて早く、正確に描けるようになります。

2. 間違いの発見

•描いた絵のバランスの間違いを見つけ、修正する方法を学びます。効率よく消して直す方法がわかると無駄な作業が減り、より早く、正確に描けるようになります。

3. 明暗の観察

• 光と影の観察の仕方、明暗を表現する方法を学びます。明暗が表現できると絵にリアリティや深みが出てきます。

4. 形の観察

•形を観察し、立体的に描く力をつける練習です。描くだけでなく粘土を使います。実際に形を作ることで明暗との違いが分かり、立体の理解が深くなります。

シングルタスクアプローチのメリット

集中力の向上

一度に一つの視点に集中することで、確実に観察のポイントが理解できます。多くの視点を同時に表現しようとすると、混乱して分からなくなりますが、シングルタスクアプローチは視点を明確にして混乱を防ぐことができます。

挫折しにくくなる

段階的に学ぶことで、少しずつ成果が見えるため、モチベーションを維持しやすくなります。小さな成功体験が積み重なることで、自信を持ってデッサンを続けることができます。

視点の理解

一つずつ異なる視点で練習してから次のステップに進むため、視点の違が明確になります。これにより、観察の基礎がしっかりと固まり、より高度な技術を習得する土台が築かれます。

個々の特性に合わせた学習

固有の視点の違いを理解し、特性に合わせた学習ができるため、苦手を克服したり長所を伸ばしたり、目的に合わせた効率的な練習ができ、目標を達成しやすくなります。

実践のための具体的な方法

1. バランスを合わせる練習

方法:

•ミリペンやサインペンなど、消せない画材を使います。直すことができないと集中力が高まり精度が上がります。

• 大きさを正確に観察する方法を学び、バランスを合わせることに集中して線だけで描く練習をします。

ポイント:

• 観察は、「モチーフが9割、描いている絵が1割」程度、とにかくモチーフを観察しながら描くことが大切です。

• メンタルが重要。失敗を怖がらないで描きましょう。失敗は学びの機会そのもので、悪いことではありません。

2. バランスの間違いを修正する練習

方法:

• 鉛筆と練り消しを使います。鉛筆は4BからHB程度で、硬すぎない方が紙を痛めません。1本でOKです。

•自分が描いた絵の間違いを見つける観察の方法を学びます。ミスを見つけて効率的に修正する消しゴムの使い方を学びます。

ポイント:

•自分が描いたいとモチーフをよく見比べ、間違いを確かめてから修正することが大切。なんとなく消したり直したりしない。

•基準を設けることで、どこから直したらいいのかどこを直したらいいのかと言うことが明確になる。

3. 明暗の表現練習

方法:

• 鉛筆と練り消しを使います。鉛筆は4BからHBの間で1本でもOK。4B、HB、2Hのように3種類もあれば充分です。

•光と影の規則性を理解し、明暗のグラデーションを観察する方法、表現する方法を学びます。

ポイント:

•光と影の流れが分かりやすいようにモチーフをセットする、分かりやすい位置から描くこと。

成功事例と受講者の声

事例1: Sさん(30代)おとなの美術室にて

Sさんは、イラストの上達が目標。これは体験講座での30分の指導のビフォーアフター。左は指導前で何を描いたら良いのかわらない状態、右は視点を明確にして描いたもの。観察のポイントを明確にすることで、バランスを正確にかつ明確に描くことができるようになった。

事例2: Mさん(左小3→右小5)読売カルチャー横浜子ども美術教室にて

事例3: Mさん(左小4→右小6)読売カルチャー横浜子ども美術教室にて

Mさんは、隔週で4年間指導をしている。この教室は自由なクラスなので、毎回しっかり描いているわけでは無いけれど、着実に成長している。彼女はバランスを合わせる能力が高く、特に色彩感覚が優れているので、色鉛筆を使って観察する練習を中心に描くことが多い。

受講者の声

Hさん

今まで何となくで描いていた工程を、一つ一つ具体的に、しかも芸術というジャンルなのに、想像していたよりもロジカルな説明だったのが驚きで、理由を理解して学びたかった私には、とても相性が良いと思って受講しました。

特に私は美術学校などで学んだ経験が無いので、ゼロからインプット出来てよかったです。

受講する前に見よう見まねで描いていた時間と、構造や仕組みを理解して絵を描くのとでは上達する速度も違い、絵を描く時間が楽しくなりました。

まとめ

「段階的に学ぶシングルタスクアプローチ」は、初心者がデッサンを無理なく、そして確実に上達するための効果的な方法です。少しずつステップを踏んで特定のスキルに集中することで、小学生や初心者でも無理なくデッサンの技術を習得することができます。このアプローチを実践することで、デッサンを楽しみながら、着実に描く力、造る力を向上させていきましょう。

さらに詳しいステップや具体的な練習方法については、オープニング記念で無料体験を実施しています。こちらからお気軽にご参加下さい。

参考資料・おすすめデッサン書籍

初心者から経験者まで、デッサンの学習におすすめの書籍です。

  • 「秘密の知識」デヴィッド・ホックニー
  • 「クロッキー入門」佐藤忠良
  • 「マチスデッサン集」アンリ・マチス

この記事を書いた人

美術指導歴は約20年。

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